通勤手当の所得税と社会保険料等における取り扱いの違いについて解説

通勤手当の所得税と社会保険料等における取り扱いの違いについて解説

給与計算や社会保険料の計算等を行う業務の中で、通勤手当は報酬月額に含めるのかどうか疑問に思う人も多いのではないでしょうか?報酬月額を計算して手入力でやっていく以上、標準報酬月額の計算に頭を悩ませるケースも少なくありません。

それでは、通勤手当の所得税と社会保険料等における取り扱いの違いについてご説明しましょう。

通勤手当は含まれる? 「標準報酬月額」の計算における3つのポイント

基本的に会社に入社した社員は社会保険に加入しなければならず、その申請書類を作成する際に報酬月額の欄を入力することになります。

入力された報酬月額の金額に基づいて健康保険料や厚生年金の保険料を決めていきます。しかし、それだけで申請してしまうと年金事務所等からダメ出しをくらってしまい、訂正や保険料の生産、社員から不足分の社会保険料を徴収することになります。

標準報酬月額を決める時は様々な勘違いを起こしやすいため、ここで標準報酬月額を計算する際のポイントを知る必要性があります。

それでは、標準報酬月額を計算する際の3つのポイントについてご説明しましょう。

標準報酬月額に「通勤手当」を含める

結論から言えば、通勤手当は報酬月額に含まれます。所得税の計算では通勤手当は、所得税法9条1・施行令20条2によって一定額まで非課税になるため、社会保険の報酬月額にも含めなくて良いと勘違いされることが多いようです。

これは所得税法において給与をもらうために職場に行く際に支払う通勤手当は手元に残るものではないので、給与扱いにして課税されることはありません。

しかし、今回は社会保険料に関する標準報酬月額を計算するので、通勤手当も課税対象になります。

これは、労働者が労働を対価として定期的に受けた労働者の生計に充てられる報酬および手当とみなされるからです。生活をするためには職場に行って給与を支払ってもらわなければなりません。

そして、その仕事場に行く際に発生する通勤手当は、給与を得るために必要な手当てなので課税対象になります。

標準報酬月額に「割増賃金」を含める

もう一つ忘れてはならないのが、標準報酬月額に割増賃金を含めることです。

残業代や休日出勤した分が割増賃金となって従業員に支払われる仕組みになっていますが、割増賃金を含めずに社会保険の申請を行ってしまうケースが少なからずあるようです。

もしも割増賃金を含めずに申請してしまった場合、年金事務所が調査を行った時に確実に指摘されてしまうでしょう。

割増賃金を標準報酬月額に含める場合、あくまで残業が何時間あって休日出勤が何日くらい発生しそうなので、割増賃金は大体このくらいだろうという見込みの金額を記載するだけでOKです。

割増金額の項目が記載されていないことの方が問題なので、見込み金額がズレていても仕方がないと思われて問題なしと思われるでしょう。

ただ、基本給にみなし残業代が含まれている場合、残業がみなし残業代の範囲で収まる見込みであれば割増賃金を上乗せする必要性はありません。

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「パートタイマー」の報酬月額

本来、パートタイマーは社会保険に加入する義務はありません。

ただし、正社員の所定労働時間の4分の3以上、そして所定労働日数の4分の3以上勤務するパートタイマーの人は、社会保険に加入する義務があります。

とはいえ、社会保険に加入するにあたって問題になるのが、基本給が時給で支払われているので正社員と違う計算をしなければならないということです。

時給で報酬月額を計算する時の計算式は、「時給×1日の労働時間×月平均の労働日数」となります。この計算式で基本給相当額を割り出し、そこへ必要に応じて通勤手当や割増賃金を加算するのが一般的な流れです。

自社で雇用しているパートタイマーが正社員の所定労働時間の4分の3以上、そして所定労働日数の4分の3以上勤務している場合は要チェックです。

通勤手当の所得税と社会保険料等における取り扱いの違い

通勤手当の所得税と社会保険料等における取り扱いは大きく違います。

上記でご説明したように、通勤手当における所得税と社会保険料では、課税対象になるかそうでないかで違ってきます。最大の違いは、手元に残るから課税対象にならないのか、給与を得るために必要なので課税対象になるのかどうかです。

通勤手当の所得税の場合は手元に残らないので課税対象になりませんが、社会保険料の場合は給与を得るために必要な通勤手当なので課税対象になります。

ただ、これらの取り扱いの違いによって、給与額が減ったり増えたり、同期と給与額が同じなのに手取り額が違ったりといった様々な問題が生じることがあります。これは通勤手当が一定以上違っていると起こる現象です。

通勤手当の金額が一定以上違っていると社会保険料等の控除額が変わるので、その分の差が発生します。もしも通勤手当が増え続けた場合、社会保険料等の控除額も増え続けるため、給与額を変更しなければ実質的な手取り額も減ってしまうでしょう。

こすいた取り扱いの違いに注意しなければなりませんが、一概にデメリットばかりが発生するわけではありません。

しかし、社会保険料等の支払いが多くなるということは、傷病手当を初めとする手当、将来的に受給できる年金の金額も多くなるのが大きなポイントです。

一方でこのようなメリットやデメリットがあるので、取り扱いに違いがあったとしても悲観することはありません。手取り額が減っているのは生活に支障が出ますが、逆に手厚い保険をかけていると前向きに捉えることができます。

まとめ

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社会保険の加入申請を行う際に混乱しやすいのが、標準報酬月額の問題です。標準報酬月額は詳しい金額でなくてもいいので、記載漏れがないようにすることが大切です。

記載漏れがあると年金事務所から調査が入って何らかのアドバイスや指示を受ける可能性が高いでしょう。場合によってはパートタイマーも社会保険に加入する義務があるので記載漏れがないように、しっかりと内容を確認してから提出しましょう。

大阪で労務管理に強く、電子化等、ITにも強い石丸社会保険労務士事務所。ぜひお気軽にお問合せ下さいませ。