会社にとって節税メリットが生じると言われる使用人兼務役員とは?

使用人兼務役員

貴方は使用人兼務役員という言葉を知っていますか?使用人兼務役員は通常の役員と違う様々なメリットがありますが、デメリットもあるのでどんなメリットやデメリットがあるのか知っておく必要性があります。ただ、使用人兼務役員がどのようなものなのか知らない人も多いのではないでしょうか?

それでは、使用人兼務役員とはどんなものなのか、通常の役員とは何が違うのかなどについてご説明しましょう。

使用人兼務役員とは?通常の役員とは何が違う?

使用人兼務役員とは、基本的に法人の役員でありながら従業員として働いている人のことを指します。

使用人兼務役員は純粋な役員や従業員とは違い、役員の立場としての決定権を持っていながら従業員としての各種制度も利用できるという大きな特徴があります。

通常の役員の場合、雇用契約を締結することができず、従業員が利用できる制度ができなくなるのが大きな違いです。

つまり、役員と従業員のいいとこどりのような役職だと言えるでしょう。

使用人兼務役員の判定基準・メリットデメリット・使用人報酬の算定方法は?

使用人兼務役員になれるケースとなれないケースがあるため、自分は使用人兼務役員になれるのか知る必要性があります。使用人兼務役員には様々なメリットやデメリットがある他、使用人報酬の算定方法も大切です。

それでは、使用人兼務役員の判定基準・メリットデメリット・使用人報酬の算定方法についてご説明しましょう。

使用人兼務役員の判定基準

使用人兼務役員の判定基準は、使用人としての職制上の地位であるかどうかです。たとえば、役員に就任したとしても、仕事内容は役員としての業務が増えただけで従業員だった時と変わらない状態の場合は使用人兼務役員として扱われる可能性が高いです。

しかし、以下の役職は従業員としての業務を行っていたとしても使用人兼務役員にはなれません。

・代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人
・副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
・合名会社、合資会社及び合同会社の業務執行社員
・委員会設置会社の取締役、会計参与及び監査役並びに監事
・その他、同族会社の役員のうち所有割合によって判定した結果、一定の要件を満たす役員

一定の役職に就いている場合は使用人兼務役員扱いには決して慣れないので注意しましょう。

使用人兼務役員のメリット・デメリット

使用人兼務役員のメリットは、以下の通りです。

・給与支給額が増減できる上に賞与まで経費にできる
・役員でも雇用保険に加入できる
・中退共に加入できる

中退共は中小企業以下を対象に退職金制度を実現させるためのもので、厳密な審査がないので加入しやすいメリットがあります。ただ、このメリットは使用人兼務役員になっている時だけ受けられる恩恵なので、本当に使用人兼務役員になるべきか検討することが大切です。

なお、使用人兼務役員になるデメリットは基本的にありません。企業側からすれば毎月給与支給額の増減に対応しなければなりませんし、従業員部分の賞与や残業代も損金にされてしまうなど、企業にとってデメリットになり得るかもしれません。

使用人報酬の算定方法

使用人報酬の算定方法は、『支給総額-適正使用人分給与=役員給与』で算出します。

また、使用人兼務役員の報酬は役員給与と使用人給与を明確に区分させ、使用人給与は他の従業員の給与規定に則って決めましょう。

役員でも雇用保険に入れる!

使用人兼務役員の大きなメリットの一つとして挙げられるのが、役員であっても雇用保険に加入できることです。純粋な役員は雇用契約ではないので雇用保険に加入することができません。しかし、使用人兼務役員の場合は従業員としての側面を持っているため、きちんと手続きを行うことで雇用保険に加入することができます。

なお、使用人兼務役員が雇用保険に加入する際には、以下の書類を提出する必要性があります。

・取締役等の雇用保険被保険者資格要件証明書
・労働者名簿
・賃金台帳
・定款
・登記簿謄本
・株主総会議事録・取締役会議事録
・総勘定元帳や法人税確定申告書等
・就業規則
・役員報酬規定
・就業記録

いずれも使用人兼務役員であるかどうかを確認するために必要であり、役員就任日や役員の任免状況、などを証明できなければ雇用保険に加入することができません。

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税メリットについて

通常の役員にはないメリットがあるのが使用人兼務役員ですが、節税できるというメリットがあることも見逃せません。

通常の役員の場合は1年を通して毎月同額の役員報酬を支給しなければ経費として算入することができませんし、役員への賞与は経費に算入することは不可能です。

しかし、使用人兼務役員の場合、給与の支給額を変更しても問題ありませんし、賞与も経費として算入できるので節税ができるのが大きなメリットです。

ただし、使用人兼務役員の給与は役員・使用人としての給与が混ざり合っていることになるので、税務調査の際に客観的にどのように区分しているのか説明できるようにしなければなりません。

賞与の場合は他の従業員と同じ時期に支給されていなければならず、金額の区分の客観性を証明することになります。いずれにしても透明性があることを証明できなければ節税すらできないので注意が必要です。

もしも使用人兼務役員を優遇して他の従業員と同じ時期に賞与を支給しなかった場合は経費に算入することができなくなります。

自分が使用人兼務役員だと主張するには?

税法上の観点で見れば、自分が役員だと明確に主張することができますが、使用人兼務役員は明確に自分の役職を主張することができません。

というのも、役員は役員になる要件が明確であり、登記簿を確認することで自分が役員であることが証明できますが、使用人兼務役員はこれらができません。要件が明確ではなく、登記もないので、自分が使用人兼務役員だと証明するのが難しいのが現状です。

しかし、自分が使用人兼務役員だと証明する方法として挙げられるのが、ハローワークに提出する「兼務役員雇用実態証明書」です。兼務役員雇用実態証明書は労働基準法の適用対象であることを証明する書類なので、ハローワークに提出することで自分が使用人兼務役員だと主張できるでしょう。

ただし、形式面と実質面で自分が使用人兼務役員だと証明する条件を満たす必要性があります。

・形式面

● 代表取締役・専務取締役等、会社を代表する役員ではないこと
● みなし役員などの同族会社の特定の役員に該当しないこと
● 使用人兼務役員を決議した議事録や、組織図、名刺に部長等を明示すること

・実質面

● 同じ部長職等の人と勤務実態や権限に差を設けないこと
● 従業員分の給与には雇用保険を支払うこと
● 使用人分給与や賞与支給時期は他の従業員と同時期に行うこと

まとめ

使用人兼務役員は役員と従業員の良いとこ取りのような役職であり、基本的にメリットしかありません。特に通常の役員ではできなかった給与支給額の増減や賞与の経費算入など、節税面でも様々なメリットがあります。

もちろん使用人兼務役員になれる人となれない人がいるので、事前に使用人兼務役員になれるのか、本当に使用人兼務役員になっても大丈夫なのか税理士や社労士などに相談するのがおすすめです。

使用人兼務役員に関して、ご不明点やご質問があれば大阪で社会保険労務士をお探しの方は石丸社会保険労務士事務所にお問い合わせ下さいませ。大阪の社労士石丸社会保険労務士事務所は専門知識を有しているため、お悩みの解決などスムーズに問題なく対応してくれます。