営業手当って何?意外と知らない基本情報と残業代との関係性

営業職についている社員には、基本的に「営業手当」を支給します。しかし、なかには「営業手当を支給する目的って?」「どれくらい支給すればいいの?」といった疑問を持っている経営者の方もいるのではないでしょうか。
営業手当は、営業職につく社員のやる気につながる大切なお金です。会社と社員の間でトラブルに発展しないよう、あらかじめ知識を身につけておく必要があります。

そこで今回は、営業手当の概要や支給する目的、種類などをご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

営業手当とは?

営業手当とは、営業職の社員に対して支払われる手当のことです。支給条件や金額が法律で定められているわけではないので、各々の企業で取り決めが異なります。
自社での営業手当に関する規定を構築するためには、営業手当の支給目的を明確にすることはもちろん、営業手当が「基準内賃金」なのか「基準外賃金」なのかもはっきりさせなくてはなりません。

営業手当の目的

営業活動を行うことで、あらゆる経費が発生します。それらを負担する営業職に対して支給されるのが営業手当であり、営業活動を円満に行うことを目的としています。

営業職、とくに外勤営業(アウトサイドセールス)の方は直接顧客と会う機会が多いもの。相手に失礼がないように、身につけるスーツや靴にも気を配る必要があります。服飾代は思いのほかかさみますし、社員が個人で負担するには厳しいものがあります。

また、顧客と良好な関係を築くために食事やゴルフなどに行くこともあるはずです。直接的な商談の場なら会社が全額負担するのは当然でしょうが、いわゆる「接待費・交際費」は実にあやふやになりやすいと言えます。受取証書(領収証・領収書)を会社に提出して経費計上すればいい、と思われる方もいるかもしれませんが、そもそも手元にお金がなければ顧客とのコミュニケーションがままならないケースもあるのです。

これらの必要経費を負担する営業職に、毎月一定額を支給するのが営業手当です。前述したように、営業手当は支給条件や金額が法律で定められているわけではないため、企業によって金額に差があります。適切な金額を定めるためにも、支給の目的や条件を明確にすることが大切です。

基準内賃金

「基準内賃金(営業活動経費)」として支給する営業手当は、営業活動を行う上で発生する必要経費に対して支給されるものです。営業という職務に対して支払われる手当なので、いわゆる職務手当と考えて問題ありません。たとえば、上記であげた服飾代や接待・交際費はこれに該当します。

「営業手当=基準内賃金」と考える企業では、雇用契約で決められている一定額を営業手当として支給するケースが一般的です。しかし、基準内賃金は時間外手当の算定基礎から除外される手当てではないため、残業があった場合は営業手当も算定基礎に含めつつ、別途時間外手当(時間給×割増×残業時間)を支払う必要があります。

◎基準内賃金(所定内賃金)
所定労働時間内の労働に対して支払われる固定的な賃金で、時間外手当(残業代)計算の基礎となる。毎月固定的に支払われる諸手当も含まれる。一律に支給されているものは、たとえ基準外賃金(通勤手当や家族手当など)に該当しても割増賃金の算定基礎に含まれる。

基準外賃金

「基準外賃金(時間外手当:固定残業代)」として営業手当を支給するケースもあります。
原則として残業があれば内勤・外勤を問わず、時間外手当を支払う必要がありますが、このケースでは「外勤営業に対する時間外手当」を営業手当として扱います。給与のうち、一定時間分の営業手当を支払い、それを時間外手当の代わりとするわけです。

◎基準外賃金(所定外賃金)
所定労働時間外の労働に対して支払われる変動的部分の賃金。時間外労働に対する割増賃金など、毎月固定的な支給が確定していないものはこれに含まれる。

営業手当を時間外手当相当分として認めるための必要条件

前述したように、時間外手当(残業代)の代わりとして営業手当を支給することは可能です。ただし、その旨が会社の規定に明示されており、かつ会社と社員(労働者)との契約内容に含まれていなければなりません。

営業手当(給与)にあらかじめ時間外手当を含むことについては、一定の条件のもとでのみ許可されています。

・就業規則(賃金規定)に「時間外手当相当額として営業手当を支給する」と明記する
・賃金に含まれる残業代を明確にし、それが何時間分の残業に相当するのか明示する
・営業手当が時間外手当相当額である計算根拠を雇用契約書などに明記する
・明細書に「営業時間外手当」「営業手当(固定残業)」などと明記する(本人や家族が見てもわかるように表示すると尚良い)
・時間外手当として営業手当を支給していても、労働基準法に基づき算出した残業代と比べて営業手当の金額が低い場合、その差額を支払う

これらの条件を満たせば、営業手当を支給し、時間外手当を支払わなくても違法にはなりません。なお、原則として時間外労働については「労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)」が適用されます。

残業代と営業手当

時間外手当(残業代)として営業手当を支払う場合、以下の点に留意する必要があります。法律に違反すると会社の信用はもとより、社員からの信頼も失いかねないため、あらかじめ確認しておきましょう。

営業手当の対象には上限が存在

残業代、ここで言う営業手当にあたる時間外勤務時間には、雇用契約書などによって上限が設けられています。営業が規定時間以上に残業を行った場合、企業は超過分に相当する時間外手当を別途支給しなくてはなりません。

残業時間数の超過分について

営業手当に含まれる月々の見込み残業時間(固定残業時間)は、会社によって異なります。仮に契約書で定められた見込み残業時間が20時間で、月の残業時間の合計が30時間だった場合、差分の10時間分に対して労働基準法に基づく割増率をかけた賃金を支払わなくてはなりません。

外勤営業について

企業によっては、外勤営業について労働時間の把握がむずかしいことから「事業場外のみなし労働時間制」として扱うケースもあります。

◎事業場外のみなし労働時間制
労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、当該業務に係る労働時間の算定が困難な場合、所定労働時間の労働をしたものとみなす。ただし、当該業務を遂行するために所定労働時間を超過した場合においては、厚生労働省の定めにより、当該業務の遂行に必要とされる時間労働したものとみなす。

参考:e-Gov「労働基準法 第38条の2」

外回りなど社外で業務を行う外勤営業は、上司や同僚などと行動しない限り、第三者に仕事の明確な時間を証明することができません。「事業場外のみなし労働時間制」では、実際の労働時間がどうあれ始業時刻から終業時刻まで労働したとみなされます。たとえば、社外業務にかかる平均時間が1日8時間の場合、労働時間を算定することなく8時間働いたものとみなすわけです。

ここで定められる「みなす時間」とは「通常その業務を行うのに必要な時間」であり、これは労使協定で定めなくてはなりません。また、法定労働時間を超えてしまう場合は36協定(さぶろくきょうてい)を締結しなくてはならず、法定労働時間を超過した分に関しては割増賃金の支払い義務が生じます。

◎36協定
「法定労働時間を超えて働いてもらう場合、あらかじめ労働組合や労働者の代表と書面による協定を結ばなくてはならない」という旨を示す協定のこと。労働基準法第36条に規定されていることから36(サブロク)協定と呼ばれている。

なお、上記の対象となるのは「事業場外で業務に従事し、指揮監督(労働時間を管理する人)がおよばず労働時間の算出が困難な業務」となっています。たとえば「電話やメールで上司から指示をもらいながら社外で業務を行っている」という場合は、客観的に指揮監督がいると判断できるためみなし労働時間制の対象外となります。

大事な社員とトラブルを防ぐためにも営業手当の形を明確に

営業手当を設ける際は、「基準内賃金」なのか「基準外賃金」なのかを明確に規定することが大切です。営業手当を一律で固定している企業も多いですが、仮に営業手当を基準外手当(時間外手当)とするなら個々の基本給によって営業手当の金額も変わってきますし、何時間に相当する金額なのかをはっきりさせなくては社員の不満が蓄積してしまう可能性があります。
営業手当や残業代に関するトラブルは決して少なくありません。大事な社員とのトラブルを防ぐためにも、営業手当に関する就業規則を見直し、必要であれば改善することをおすすめします。

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